科学的根拠をもとにした認知症重度化予防に取り組むため、デイサービス然では開所当初から学習療法を導入。
2年目には学習療法実践モデル施設に選ばれ、県内外の導入希望施設の見学者も受け入れています(四国で130か所、徳島県内では15か所の事業所が学習療法を導入。2022年2月時点)。
学習療法では、「読み書き・計算・すうじ盤」の3つのプログラムで脳の血流を活発にします。
なかでも脳の司令塔であり、人の感情や思考をコントロールすると言われている「前頭前野」を活性化することは、脳全体の領域に影響します。
川島隆太教授の研究の結果、「簡単な計算をすらすら解く」「音読する」ときに最も活性化することが分かっています。
学習療法は、学習者と学習支援 がコミュニケーションをとりながら学習します。学習支援者1名、学習者2名で行います(認知症症状や身体状況により1対1で支援)。
支援者は「さすがですね」「今日もいいお声ですね」と褒めたり、取り組みのスピードや表情の変化を見て、学習者が安心する言葉を掛け続けます。
カレンダーや時計を見て教材に日付や時間を書き込んだり、ストップウォッチを自分で押します。
学習療法のなかには、「作動記憶(ワーキングメモリー)」や「短期記憶」を繰り返し、脳を活性化させる工夫が盛り込まれています。
見当識(日付や時間の認識)の理解状態や取り組み時間を、支援者は毎回記録。認知症症状の 段階を客観的に把握・共有し、日々のケアに役立てています。
1回の学習時間は20分程度です。なかでも最後のコミュニケーションの時間は重要です。
実は前頭前野は、人とコミュニケーションしているときに最も活性化しています。対面・対話の時間を楽しいものにして、血流を高め、脳を効果的に刺激します。
学習療法の初めに、認知症スケールを計る「FAB」と「MMSE」という二つの検査を実施し、適正教材を決めています。
FABでは、思考し言葉を導きだしたり、動作を真似たり、ルールを一時的に覚える検査でその方の前頭葉機能を測定します。
MMSEでは、日付や季節、場所がスラスラと言えるか(見当識)、計算がスラスラできるか、一度見たものの記憶、聞いた言葉の復唱、図形の描写などで検査します。
01FAB (Frontal Assessment Battery) |
02MMSE (Mini-Mental State Examination) |
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6つの項目の検査をすることで前頭葉の機能を測定します。各検査を0~3点で点数化し、合計得点は18点満点です。
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認知機能の状態を客観的に評価するテストで、世界中で最も用いられている認知症の検査です。 「時間の見当識、場所の見当識、即時想起、注意と計算能力、遅延再生(短期記憶)、言語的能力、図形的能力(空間認知)」の11の検査で30点満点中27点以上取れれば「問題なし」と評価されます。 |
01FAB (Frontal Assessment Battery) |
6つの項目の検査をすることで前頭葉の機能を測定します。各検査を0~3点で点数化し、合計得点は18点満点です。
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02MMSE (Mini-Mental State Examination) |
認知機能の状態を客観的に評価するテストで、世界中で最も用いられている認知症の検査です。 「時間の見当識、場所の見当識、即時想起、注意と計算能力、遅延再生(短期記憶)、言語的能力、図形的能力(空間認知)」の11の検査で30点満点中27点以上取れれば「問題なし」と評価されます。 |
Sさんは2021年10月に学習療法をスタート。Sさんにとって初めてのデイサービス利用。最初は休みがちで、来所しても不穏な様子でした。しかし数か月後には、通所回数を2回、3回と増やし、いまでは「楽しんで行っています」と送り出す娘様の安心した表情を見ることができるようになっています。SさんにとってのQOL(生活の質)向上はもちろん、日常生活での変化で介護者・ご家族支援にもつながった事例のひとつです。
2016年9月に認知症と診断されたYさん。進行予防のために、2017年2月から週1回の利用をスタートしました。
同時に学習療法も開始しました。学習の場面でもスタッフとコミュニケーションはとりますが、ペアになった人との会話やデイルームで他者との交流はほとんどありませんでした。
現在は週3回の通所日には必ず学習療法に取り組み、自ら積極的に周囲の人と関わりながら過ごしています。
デイサービス然では、すべてのスタッフが学習療法の目的を理解するための「指定研修」を受けています。
学習療法を通して気づきの力や記録・報告の力が伸び、利用者様とのコミュニケーションやスタッフ間の情報交換が増え、「なんのための支援か」を全員が考える風土が自然と広がっていきます。
学習療法は、利用者様の認知症症状の重度化予防だけでなく、私たちスタッフの成長ややりがいにもつながっています。
学習療法は希望された方のみが対象です。教材費として、利用回数に関わらず おひとり月額2,200円いただきます。ご家族やケアマネジャーさんと一緒に無料体験もできます。
子どものころの思い出や懐かしい出来事を語ってもらい、脳を活性化させる回想療法。非薬物療法のひとつで、個別回想療法・集団回想療法のふたつの方法があります。
仲間と話題を共有し楽しむと不安や孤独感が和らぎ、自分の話を聞いてもらえているという満足感も得られるので、認知症の方に多いうつ症状の改善・予防にもなります。
デイサービス然では、毎日午後2時ごろから集団回想療法を実施しています。
「なんとなく」のおしゃべりではなく、テーマや目的を明確に取り組んでいます。
とはいえ、昔と風景や建物が変わったというお話から「刑務所は昔はあそこちゃうかった」「刑務所に面会に行ったことある」とか、食事の話題から「やっぱり、いのししやな」「ウサギ食べよったわ」など思わぬ展開になることも!
集団回想療法では、何気ない日常の出来事や季節の話題から、だれもが話しやすい「子供時代の遊び」や「お弁当の思い出」などへと広げていきます。ときには昔の徳島駅前の写真を見たり、巻きずしや季節野菜を詰めて野原へ出かけた遊山箱を手に取ったり、梅干を実際に漬けてみることもあります。 正面の大きなホワイトボードは、お耳の遠い方や集中しづらい方のために、どんな話しをしているのかがいつでも思い出せるように活用しています。
より良いケアにアセスメントは欠かせませんが、認知症の方からケアに必要な情報や環境因子を聞き出すのは簡単ではありません。
しかし回想療法では、ご本人の自発的な言葉から「大切なもの、好きなもの、経験されたこと(そう思い込んでいるものも中にはあるかもしれませんが)」を拾い上げることができます。
私たちスタッフにとって回想療法は、利用者様の人生や考え方を教えていただく機会になっているのです。